外出先でも自宅のような居住快適性を保てることはキャンピングカーの大きな魅力ですが、外気温が氷点下になるような真冬の車中泊では十分な暖房性能がなければ辛い記憶にもなりかねません。そこで活躍するのが「FFヒーター」です。今回はキャンピングカーに設置するFFヒーターについて、その特徴と装着方法を見てみましょう。
外出先でも自宅のような居住快適性を保てることはキャンピングカーの大きな魅力ですが、外気温が氷点下になるような真冬の車中泊では十分な暖房性能がなければ辛い記憶にもなりかねません。そこで活躍するのが「FFヒーター」です。今回はキャンピングカーに設置するFFヒーターについて、その特徴と装着方法を見てみましょう。
家庭用暖房でも使用されるFFヒーター。「密閉式・強制吸排気型ヒーター」の略称です。家庭で使う小型の開放式ストーブや石油ファンヒーターでは灯油を燃料に室内の空気を燃焼に用いて暖気を循環させますが、FF式の場合は燃焼に外気を用いるため燃焼部分と暖気循環部分が完全に分離されています。このため、燃料を燃焼させた際に発生する一酸化炭素などの有毒ガスが室内に放出されず、空気を汚しません。
キャンピングカーに設置する場合、燃料は灯油ではなくエンジンを動かすためのガソリンや軽油を使用することがほとんどで、機種によってはLPガスを使用する場合もあります。車体への取り付けには燃料タンクへの配管や外板を加工しての本体設置、発熱対策など専門的知識が必要となるため、「本体を購入してDIYで設置」というようにお手軽にできるものではないでしょう。
FFヒーターの便利な特徴として、以下の3点が挙げられます。詳しく見てみましょう。
一般的な車の暖房はエンジンの廃熱を利用しますが、FFヒーターは暖房用に燃料を燃焼させます。エンジンを始動しているかどうかにかかわらず利用でき、作動音も比較的静かなため、夜間のキャンプ場等でも周囲に迷惑をかけずに使用できます。燃料使用量も4~8時間で1リットル程度であり、燃料費は時間あたり数十円です。燃料ポンプやファンの駆動に電力を使用するためバッテリーへの接続は必要ですが、サブバッテリー装着車であれば一晩作動させ続けることも可能になります。
燃焼用の外気と室内の暖気循環が完全に分離されていることがFFヒーターの特徴です。開放式ストーブなど室内の空気を燃焼させる暖房の場合、発生した一酸化炭素や二酸化炭素などが室内に放出されるため、定期的な換気が必須となります。FFヒーターでは燃焼部分は外気を用い、燃焼ガスは室外に排気されます。室内の空気は発生した熱だけを受け取るため汚されません。一酸化炭素中毒は自覚症状の無いまま意識を失い命にもかかわる危険な中毒ですが、FFヒーターであれば暖房を入れたまま眠ってしまっても安心です。
ただし、自動車の排気ガスと同様に排気管が雪などで塞がれてしまった場合、室内に逆流してくる可能性はゼロではありません。積雪地で連続使用する際は定期的に排気管周辺の雪の状態を確認しましょう。排気管の不適切な設置も不完全燃焼を誘発し、一酸化炭素発生量が増える可能性があるため、専門知識に基づいた適切な設置は必須です。
また、昨今では新型コロナウイルス感染症予防のため、定期的な換気が推奨されています。冬季は湿度も下がり乾燥しがちなため、加湿器や濡れタオルのような乾燥対策も行うと良いでしょう。
車両燃料と同じガソリンや軽油を使用するタイプの場合、燃料費はほとんど気にならないレベルで済むでしょう。一晩中稼働させたとしても使用燃料は2リットル程度、1時間あたりの燃料費は前述のとおり数十円程度です。ガソリンスタンドで手軽に補給できるため、残量に神経質になる必要もありません。一方、LPガスを使用するタイプの場合は少々事情が変わります。後述しますがLPガスの充填は「どこでもできる」とは言えず、また金額も若干高めになります。
FFヒーターの燃料ポンプやファンの稼働には電力を使用します。そのため、エンジン停止中に利用するためには通常のエンジン始動用バッテリーとは別にサブバッテリーを搭載しておく必要があります。とは言えバッテリーの使用量はそれほど多くなく、フル充電なら2晩程度は充電なしに稼働できる場合が多いようです。
家庭用ストーブでは灯油を使用する場合が多いですが、キャンピングカーに設置するFFヒーターの場合はどうでしょうか。燃料別に確認してみましょう。
走行用燃料、つまりガソリンや軽油といった「エンジンで使用する燃料」をFFヒーターでも共有するタイプです。燃料の準備はガソリンスタンドで通常通り給油するだけなので、全く手間が掛かりません。燃料費も比較的安く、多少FFヒーターを使っても気にならない程度でしょう。
注意点として、軽油の場合、外気温が低いと凍ってしまう可能性があります。水のようにカチカチに凍るわけではありませんが、流動性が低下し始動できなくなります。もちろんこれはFFヒーターだけでなくエンジンでも同様であり、寒冷地への移動の際は注意が必要です。軽油は地域によって低温流動性の異なる仕様が販売されているため、冬の東北・北海道や内陸高地に出向く際は出発点ではなく現地で満タンにするよう心がけましょう。
また、ガソリンや軽油は不完全燃焼時にススが発生したり、長期保存した際に燃料品質が劣化するという特性があります。そのため、ヒーターを使用しない期間でも定期的に稼働させ、内部の状態をクリーンに保つ必要があります。走行用燃料を使用する機種の場合、毎月1~2回はヒーターの試運転をすることが推奨されています。
海外製の大型キャンピングカーの場合、FFヒーターなどの燃料としてLPガスを使用しているケースもよく見られます。日本国内では供給地点が少なく価格も割高なため、購入時によく検討しましょう。
ボンベ持ち込み充填の際のLPガス価格は1kgあたり400~800円程度となっており、地域や事業者による価格差が大きめです。ガス消費量が100g/h、一晩で800gのヒーターであれば、燃料費は500円前後。軽油の場合、130円/リットル換算で260円程度と考えれば、およそ2倍の燃料費がかかる計算です。また、定期的にボンベの有効期限による更新や設備点検でも費用が発生するため、走行用燃料を使用する場合に比べ出費は大きくなる可能性が高いでしょう。
LPガスなどの高圧ガスボンベを車載する際には法律の要件を満たす必要があり、また供給する業者にも法令上の制約があります。具体的には「緊急時対応のため、原則として30分以内に到達可能な範囲内の消費者のみ充填可能」とされています。この法令を理由にキャンピングカーへの充填を拒否されるケースもあり、LPガス燃料を利用する際には充填場所の確保が最初の関門となります。
一方、LPガス燃料のメリットとしては「メンテナンスの楽さ」が挙げられます。ガソリンなどの走行用燃料を使用する場合、夏季であっても定期的に試運転を行い燃料・燃焼系統をクリーンに保つ必要がありますが、品質劣化が少なく燃焼時にススを出さないLPガス燃料の場合はその必要がありません。また、走行用燃料・バッテリーに加え第三のライフラインを得られるため、いざというときの備えとしては間違いなくプラスに働きます。ヒーターの使用頻度が少ない方や供給地点が身近にある場合、LPガスも有力な選択肢かもしれません。
キャンピングカーの購入時にFFヒーターが装着されていない場合、後から取り付けることはできるのでしょうか。結論から言えば、可能です。取り付けに必要なスペース自体もそれほど大きくないため、軽キャンパーでも設置は可能です。
ただし、後から装着する場合は取付スペースや配管などに制約が発生するため、最初から装着されている車両に比べると暖房効率が下がるなどの弊害は覚悟する必要があります。「後付け」はなるべく避け、行うとしても専門業者に依頼することをお勧めします。
架装メーカーが他の室内設備と同時に装着する場合、設備同士の相性や配管の取り回しを一括して検討することができるため、効率的なスペース利用や暖房性能の最大化まで考慮されたものとなっている場合が多いでしょう。後付けの際には空いたスペースの範囲内で設置することになるため、温めた空気がうまく室内に循環せずに期待した暖房効果を発揮できない可能性もあります。
また、FFヒーターの設置には専門知識が必要です。走行用燃料を使用する場合は燃料タンクへの配管設置を行うため、特に慎重な検討が必要です。不適切な設置を行った場合、燃料漏れからの火災発生という可能性も十分にあり得ます。ヒーター本体が15万~20万とそれなりに高額であり、設置費用を含めればさらに大きな出費となりますが、安易にDIY等で済まそうとすると重大な事故を招きかねません。
キャンピングカーとFFヒーターについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
冬季の車中泊を日常的に行うような方なら、FFヒーターは必須装備と言えるでしょう。冬以外でも、「少し寒いな」という時にエンジンを始動せずともスイッチ一つで稼働できる点がFFヒーターの大きなメリットです。後から装着することも可能ではありますが、様々な制約下での設置になります。FFヒーターが必要な場合はキャンピングカー購入時に初期装備として装着済みの車両を選んだ方が無難です。
FFヒーターは正しく使用すれば安全で居住快適性を高める有用な装備です。上手に活用し、快適なキャンピングカーライフを楽しみましょう。
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