キャンピングカーのなかでも、トラックをベースとした「キャブコン」は本格派の花形です。室内の広さや、いかにもキャンピングカーというスタイルは多くのユーザーにとっての憧れでもあります。
キャブコンと言えばトヨタ・カムロードをベースとしたモデルが主流ですが、今回はそれより少し小さめの「ライトキャブコン」について紹介していきます。
キャンピングカーのなかでも、トラックをベースとした「キャブコン」は本格派の花形です。室内の広さや、いかにもキャンピングカーというスタイルは多くのユーザーにとっての憧れでもあります。
キャブコンと言えばトヨタ・カムロードをベースとしたモデルが主流ですが、今回はそれより少し小さめの「ライトキャブコン」について紹介していきます。
その名の通り、「ライトキャブコン」は少し小さなキャブコンのことを指します。代表的なベース車両はトヨタ・タウンエース及びそのOEM(相手先ブランド供給)車、そしてマツダ・旧型ボンゴです。排気量1.5リットルから大きくても2リットルクラスの車両ですので、走行性能は控え目ですが、その分取り回しの良さや価格帯に利点があります。
最大積載量は750kg~1150kg程度のため、カムロード等をベースにするキャブコンと比べれば、シェルの重量には制限があります。しかし、居住空間を高さや幅方向に拡大することで空間的な広さはそれほど差の無いレベルに仕上がります。
また、新車でも比較的手の届きやすい価格帯であることも特徴です。
ライトキャブコンのメリット・デメリットを具体的に見てみましょう。
いずれも「ライト」であることに起因するものが中心です。
やはりボディサイズが大きすぎない点が大きな魅力です。
買い物や送迎といった日常使いも許容でき、旅行などでは快適な室内空間でキャンピングカーらしさを楽しめる、このバランスの良さは他に代え難いものがあります。
ベースとなるモデルが2リットル未満の4ナンバー貨物車のため、取り回しの良さは抜群です。居住性確保のために全幅は2m近くまで拡大されたモデルもありますが、それでも全長やホイールベースは普段使いを許容するレベルに収まります。
ライトキャブコンは多くのモデルが全長4.7m程度であり、またホイールベースはベース車両と変わりません。そのため内輪差や尻振りも大きくなく、乗用車の感覚と大差なく運転することができます。
最小回転半径が同じでも、ホイールベースが長ければそれだけ内輪差が発生し、実際の取り回しには悪影響が出ます。また、後輪より後ろのオーバーハング部分が長ければ操舵と逆方向への尻振りが発生するため、狭い駐車場では出庫時にも気を使います。
スーパーでの買い物、サービスエリアでの休憩などの際にも一般車スペースの駐車場に無理なく収まるライトキャブコンの取り回しは、初めてキャブコンに乗る方にも心強いポイントでしょう。
取り回しの良さと相反しそうですが、居住空間の広さもライトキャブコンの魅力となります。「ライト」ではありますが、キャブコンですのでシェルの架装には自由度があります。運転席のあるキャブ部分以外を全面的に作り変えることで快適な居住空間を実現できるキャブコンの魅力は、ライトキャブコンであっても変わりません。
乗車時6名、就寝時4~6名程度がライトキャブコンの平均的な定員数ですが、キャンピングカーに7名・8名乗車する機会が頻繁にあるという方はそれほど多くないでしょう。ライトキャブコンは4名乗車であれば十分に快適な居住空間を備えています。
ライトキャブコンの中心的な新車価格帯は400~600万円クラスです。これはカムロードベースのキャブコンに比べ2~3割ほど安い価格帯となります。この価格差の分、購入後の旅行やキャンプに費用をかけられると考えれば、魅力的な選択となる場合も多いのではないでしょうか。
キャブコン全般、あるいはキャンピングカー全般に言えることでもありますが、ライトキャブコンもリセールバリューは優秀です。中でも旧型ボンゴをベースとした車両はすでに新車購入ができないこともあり、中古市場では高い価格帯を維持しています。
一方のデメリットですが、やはり「ライト」であることの副作用が見られます。具体的に確認してみましょう。
現行タウンエースシリーズの場合、エンジンは排気量1.5リットルのガソリンエンジンのみです。車両総重量が2t以上となるため、やはり非力感は否めません。
ベースモデルは優れた燃費性能も売りの一つですが、キャンピングカーの場合は常にフル積載状態で走行しているので、エンジンにも常に相応の負荷が掛かり、燃費の悪化度合いも比較的大きくなります。
カムロードの場合は2.8リットルのディーゼルエンジンが設定されるため、余裕をもった走行性能を求めるならこちらも検討してみるべきかもしれません。
ライトキャブコンを運転する上で最も注意するべき点がこちらです。
ホイールベースの短さは取り回しの上ではメリットになりますが、直進安定性の面ではデメリットとなり、特に高速走行時には上下動やふらつきを招きます。
室内空間を稼ぐために全高は2.5m以上となっている車両が多く、その一方で左右のタイヤ間を示すトレッド幅は小さいため、コーナリング性能にも不安があります。旧型ボンゴは特にトレッドが狭いため、横転防止に細心の注意が必要です。
高速道路や山間部のワインディングを走行する際は、乗用車とは別種の車両であるということを忘れず、速度を控え、カーブ進入時には十分な減速を行い、急制動や急ハンドルを避けた運転を行う必要があります。
実用上のデメリットとして、シャワーやトイレなどに使う「マルチルーム」を搭載していないモデルが多いことも挙げられます。もちろん搭載車両もありますが、その分室内レイアウトやボディサイズ、価格などに何かしらの影響を及ぼします。
多人数、長期間の旅行などを前提とした場合は快適性に差が出る可能性があるため、上のクラスのキャブコンも検討した方がいい場合もあるかもしれません。
2020年に旧型ボンゴが生産を終了したため、現在新車購入可能なこのクラスのベース車両はタウンエースシリーズのみとなっています。このタウンエースはダイハツがインドネシアで「グランマックス」として生産する車両のOEMモデルであり、マツダ・ボンゴも2021年以降は同車種をOEMで販売しています。
グランマックス自体が現地で販売していたハイゼットに近い車種であり、小排気量の小型トラックというポジションのため、重量のかさむキャンピングカーへの架装に向いたモデルとは言い難い面もあります。
旧型ボンゴでは1150kgあった最大積載量が現行モデルでは800㎏に減少している点を見ても、シェル設計の自由度には限界があると考えられます。
次に、ライトキャブコンの代表的車種を紹介します。
AtoZはライトキャブコンの代表的なビルダーです。旧型ボンゴをベースとしたアレンやアミティの開発の際にはマツダ社と共同で研究を行ったという逸話もあります。2020年の旧型ボンゴ生産終了以降はタウンエースと同車種となる新型ボンゴにベースを切り替え販売しています。
アレンは500万円台を中心としたモデルで、ルーフの高さによってハイ/ローの2車種に分かれます。特徴である常設2段ベッドをはじめ、大人4人が快適に乗車・就寝できる装備を備えています。
全長を4880mmまで延長し、マルチルームを備えたモデルです。超軽量アルミシェルにより重量増を最小限に留め、走行性能を維持したまま快適な居住空間を備えます。
価格は550万~とアレンシリーズより若干高額ではありますが、手の届きやすい範囲内に収めています。
常設ベッドはありませんが、その分ダイネットは広く開放感があり、最大7名程度がテーブルを囲むことも可能です。
ライトキャブコン市場で最も流通台数が多いといわれる車種が、旧型ボンゴベースのアミティです。2006年の発売以来人気を保ち、2020年以降は新車購入ができないこともあり、現在でも中古市場では高い価格を維持しています。
インテリアコーディネーターを招いてデザインされたという内装はバリエーションが豊富で、取り回しの良さも相まって女性人気が高い車種でもあります。
今回は「ライトキャブコン」について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。取り回しの良さと居住空間の快適さが程よくバランスされたライトキャブコンは、初めてキャンピングカーに乗るという方から本格派キャンパーまで、幅広い層におすすめできる車種です。
ただし、ライトキャブコンの走行性能には限界があることも知っておくべきでしょう。高速走行や長距離走行の機会が多いユーザーの場合、運転時の快適性はあまり高くない可能性があります。トレッドと全高のアンバランスによる横転の可能性や横風への弱さ、ホイールベースの短さによる直進安定性の低さは特に注意が必要です。
それを踏まえた上で、手の届きやすい価格帯で本格的なキャブコンが手に入るという大きな魅力を、ご自身のライフスタイルや使い方に照らしてよく検討していただき、よりよいキャンピングカーライフをお送りいただければ幸いです。
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