電力需要の逼迫が話題になりましたが、キャンピングカーにとっても電力確保は重要な問題です。エアコンやヒーター、冷蔵庫といった利便性の高い電気製品は居住快適性を左右する装備ですから、それらの消費電力について気になっている方も多いのではないでしょうか。今回はキャンピングカーの電力需要を担う「サブバッテリー」について確認してみましょう。
電力需要の逼迫が話題になりましたが、キャンピングカーにとっても電力確保は重要な問題です。エアコンやヒーター、冷蔵庫といった利便性の高い電気製品は居住快適性を左右する装備ですから、それらの消費電力について気になっている方も多いのではないでしょうか。今回はキャンピングカーの電力需要を担う「サブバッテリー」について確認してみましょう。
一般的に、ほとんど全ての自動車にはバッテリーが搭載されています。これは従来の内燃機関車では、エンジンを始動させる際にスターターモーターがクランクシャフトを回し、スパークプラグを発火させる電力を供給するためです。エンジンが始動してからはエンジンに接続されたオルタネーターという発電機が稼働するため、おおむねの電力は賄えますが、始動時の電力は外部から供給する必要があります。そのために搭載されていたのが従来のバッテリーで、「メインバッテリー」とも呼ばれます。鉛バッテリーを用いる場合がほとんどです。エンジン始動時には100Aを超える電流が必要になるため、瞬間的に高い電力を供給できる構造になっています。
近年の電気自動車やハイブリッドカーの場合、バッテリーは主に走行用モーターに電力供給することが目的であり、鉛バッテリーでは容量を賄えないため、ニッケル水素やリチウムイオン方式の大容量バッテリーが搭載されています。車種によっては電力を外部へと供給することが可能なものもあり、災害時やアウトドアの際の電力供給にも活用されています。
キャンピングカーのサブバッテリーの場合、その電力は車内で使用する家電製品への供給が主な用途となります。サブバッテリーとインバーターを搭載することで、家庭用電化製品をある程度の時間使うことができるようになり、キャンピングカーの快適性はさらに向上します。
家電製品の場合はエンジン始動時のような瞬間的な電力供給は必要ありませんが、エンジン停止中にエアコンや冷蔵庫などを動かすためにはメインバッテリーの特性は不向きなうえ、容量もすぐに不足してしまうため、長時間の電力供給に適したサブバッテリーが必要となります。
現在キャンピングカー用としては、おおまかに2種類のサブバッテリーが用いられています。それぞれを詳しく見てみましょう。
メインバッテリーと同様に鉛を使用したバッテリーです。通常の鉛バッテリーとは電極の構造が異なり、瞬間的な大電力供給は苦手なかわりに長時間の放電に適したものとなっています。メインバッテリーは常にフル充電で使うことを前提としているため、完全放電を繰り返すとすぐに使用できなくなってしまいますが、ディープサイクルバッテリーは繰り返しの使用にも比較的強く作られています。とは言え、劣化の原因となることは間違いありません。寿命を延ばすためにはおおよそ50%程度の放電に留めることが重要だとされています。
また、鉛バッテリーの特性として、放電に伴い電圧が降下していきます。充電量が低下すると定格電圧を満たせず、家電製品が動かなくなるという可能性もあります。そのため、充電量を使い切るような使い方はできません。寿命を維持するためにも、余裕をもった使用法が求められます。
重量は1個あたり20~30kg程度あります。コストは比較的低めで、容量や性能にもよりますが1個1~2万円程度から購入できます。
近年、キャンピングカーにも利用が広まってきたのがリチウムイオンバッテリーです。パソコンやスマートフォンのポータブルバッテリーとして身近な存在ですが、キャンピングカー用のものは100Ahや200Ahという大容量のものが主流です。
鉛バッテリーと異なり放電による電圧降下を起こしにくいため、容量の90%以上を使用することができます。そのため同容量の鉛バッテリーと比較すると、取り出せる電力の点では2倍以上の差になることもあります。
比較的寿命が長いことも利点で、計算上では鉛バッテリーの4倍にも達するとされています。ただし、リチウムイオンのサブバッテリーがキャンピングカー市場に流通し出したのはこの数年のことであり、耐久性や寿命についての過信は禁物かもしれません。
課題点は価格で、製品によりますが容量比で鉛ディープサイクルバッテリーの2倍から10倍程度と、高性能に見合った高価格となっているのが現状です。それでも上記の性能差が事実であれば、結果的に割安と言えるかもしれません。
注意点として、現在鉛ディープサイクルバッテリーを使用している車両にリチウムイオンバッテリーをそのまま積みかえることはできません。充電の仕様も異なるため、リチウムイオンバッテリー専用のシステムを構築する必要があります。
このようなサブバッテリーですが、実際にどの程度使えるのでしょうか。具体的に見てみましょう。
バッテリーの容量には「100Ah(5HR)」等の表記が見られますが、これは「5時間率で100A」の意味で、「フル充電から電圧が10.5Vに低下するまでの5時間、20Aの電力を放出できる性能」を表しています。新品の鉛バッテリーの場合、フル充電時の電圧は負荷の少ない状態で13.5V前後とされています。電気製品の接続などで負荷を掛けると電圧は降下し、負荷が大きいほど降下の割合も大きくなります。電圧の降下は放電が進むと更に大きくなり、いずれ電気製品を稼働できなくなります。この「稼働できなくなる限度」を10.5Vと定め、そこまでに使用可能な容量を計測したものが「5時間率」や「20時間率」と呼ばれる規格になります。
放出する電力が大きいほど電圧の降下が早くなるため、「100Ah(5HR)」の容量を持つバッテリーであっても「50Aで2時間」や「100Aで1時間」という使い方はできません。また、充電容量が低下した際の劣化促進を考えると、実際に使用可能な容量は記載値の6~7割程度だと考えるべきでしょう。
リチウムイオンバッテリーの場合も負荷による電圧降下は起きますが、放電による降下は充電量がなくなる直前まで起きにくいため、基本的には表記に近い使い方が可能です。とは言え、実際には直流電源を交流に変換するインバーターや配線間のロスもあり、さらに大電流使用時には熱も発生するため、記載通りの容量を100%使用することは不可能です。それでも鉛バッテリーに比べ表記に近い性能を発揮できるとされています。
バッテリーの容量が分かれば、家電製品の使用可能時間も計算することができます。上記の「100Ah(5HR)」バッテリーの場合、20Aの電流を5時間流せる容量を持ちます。もちろん、実際には配線や発熱のロスもあるためその通りにはいきませんが、あくまで計算上の話としてご了承ください。
例えば車載のFFヒーターを使用する場合はどうなるでしょうか。運転時の消費電力24WのFFヒーターの場合、車載電源の定格12Vで計算すると電流量は2Aとなります。100Ahバッテリーならば50時間の連続稼働が可能という計算です。前述のロスに加え、起動時には消費電力が大きくなるため、温度センサー等で起動と停止を繰り返す状況であれば稼働時間は大きく短縮される可能性があります。
エアコンはFFヒーターの10倍以上の電力を消費します。大型のエアコンの場合、起動時には1000W以上の電力を必要とするものもあり、サブバッテリーの容量も100Ah程度では心もとないでしょう。エアコンに加え、冷蔵庫や照明も電力を消費しています。ここでは100Ahのサブバッテリーを3個接続した場合を想定してみます。
複数の電気製品を考える場合、電流量で計算することは難しいため、電力消費量として「Wh」に変換します。定格12V、100Ahのサブバッテリーを1200Whの電源と仮定し、3個接続で3600Whの電力を蓄えているものとします。そこから電圧降下と劣化防止のマージンを考え、使用可能な電力は50%の「1800Wh」としてみましょう。仮定を重ねた計算ですので、あくまで参考値とお考え下さい。
エアコンを540W、冷蔵庫を50W、照明を6Wとした場合、消費電力の合計は約600Wとなります。使用可能な電力が1800Whですから、連続稼働時間は約3時間と考えられます。これは一切充電を行わない場合の仮定であり、走行中やソーラー発電を利用可能な場合などはもっと長く使用することができるでしょう。給電設備のない場所での就寝時など、充電できない状況下ではエアコンなどの消費電力の大きな機器の使用には注意が必要です。
充電が難しい場所では「あとどれくらい使えるか」が気になるところです。電圧を測定して降下の度合いを見る、バッテリー残量を確認する機器を取り付ける等の方法がありますが、特に鉛バッテリーの場合は使用中の誤差や変動が大きく、参考程度に考えた方が良さそうです。行程中に充電できないことが予想される場合は、出発前にフル充電にして臨みましょう。
FFヒーターやエアコンの場合は基本的に車載用なので定格電圧は直流12V、バッテリー電源をそのまま利用可能です。しかし、家庭で使用する多くの家電製品は交流100Vの電源が必要です。電子レンジやドライヤーなど、キャンピングカーで利用できると便利な家電製品はたくさんありますが、それらを使用するにはどうすれば良いのでしょうか。
それには「インバーター」と呼ばれる機器が必要です。
インバーターは直流電源を交流電源に変換するもので、サブバッテリーシステムと同時装着する場合が多いでしょう。インバーターを介すことで、あらゆる家庭用電化製品が使用可能になります。
インバーターを装着する際には、消費電力をよく検討しましょう。600W、1200W、1500Wなど様々な製品がありますが、ドライヤーや電子レンジを使用するのであれば1500W以上が無難でしょう。1500Wと聞くと大きな電力に感じるかもしれませんが、家庭用のコンセント1箇所がだいたい1500Wの容量です。比較的高額にはなりますが、使用したい機器の消費電力と照らし合わせ、余裕を持った構成にしておく必要があります。
次に、サブバッテリーの充電方法を確認してみましょう。メインバッテリーは走行中の充電がほとんどですが、サブバッテリーの場合はいくつかの方法があります。
メインバッテリーと同様にエンジンの稼働で充電する方法です。オルタネーターで発電された電力をメイン・サブ並列で充電するタイプ、まずメインに充電し余剰分をサブに充電するタイプ、それらを電子制御で行うタイプなどがあります。
ただし、現代の車両はメインバッテリーの充電量を測定し、燃費悪化の要因となるオルタネーターの発電量を制御する場合が多いため、メインバッテリーがフル充電の場合は後付けのサブバッテリーは適切に充電できないという可能性もあるようです。
家庭用電源などで外部から充電するタイプです。最も安定した充電が可能です。ただし、充電可能な場所は自宅や給電設備のあるキャンプ場・RVパークに限られます。
キャンピングカーにソーラーパネルを設置し、充電を行うことも可能です。この場合、他の充電方法と併用するための制御機器を同時に設置する必要があります。費用はかかりますが、災害時の活用可能性も含め、今後主流になってくるかもしれません。
ソーラーパネルの設置はもちろん、いずれの充電方法でも、電気系統の配線は専門知識が必要となり誤った接続は車両火災等を招く可能性があります。必ず専門家に依頼して行うようにしましょう。
気になるバッテリー寿命ですが、鉛バッテリーは基本的に3年程度と言われています。充電・放電の回数や放電の程度によっても異なりますが、過放電は一気に寿命を縮めるため、コントローラーで制御するなど、過放電を起こさない対策が必要です。
リチウムイオンバッテリーの場合は10年以上の製品寿命があるとも言われますが、新しい製品のため実情が分かるにはあと数年かかるでしょう。電圧降下の起きにくいリチウムイオンバッテリーですが、完全放電した場合は再充電ができなくなる可能性があります。また、過放電を繰り返すと電池の劣化が進みます。さらには過充電やそれに伴う出火など、重大な事故に繋がる可能性もあります。製品の注意事項を把握し、適切に利用しましょう。
今回はキャンピングカーのサブバッテリーについて、種類や使用方法を見てきました。鉛ディープサイクル、リチウムイオン、それぞれにメリット・デメリットがあるのが現状ですが、電子機器の増加や快適性確保のため、今後はリチウムイオンバッテリーなどの大容量電池が主流になっていくと思われます。また、近年の電気自動車で開発が進む「全固体電池」が実現されれば、キャンピングカーの電力事情も大きく変わってくるでしょう。
いずれにしても、キャンピングカーで使用可能な電力は限られています。家庭以上に節電を意識しなければ、バッテリーはすぐに空になるでしょう。その時々に必要な電力を上手に使い、無駄なく快適なキャンピングカーライフをお楽しみください。
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