2022年4月1日から、キャンピングカーとして8ナンバーを取得する際の構造要件が変更されました。これにより、特に軽・小型車をベースとした8ナンバーの取得が以前より容易になったと言われています。一方で、世の中には8ナンバー「ではない」キャンピングカーも数多く存在しています。これはいったいどういうことなのでしょうか?
2022年4月1日から、キャンピングカーとして8ナンバーを取得する際の構造要件が変更されました。これにより、特に軽・小型車をベースとした8ナンバーの取得が以前より容易になったと言われています。一方で、世の中には8ナンバー「ではない」キャンピングカーも数多く存在しています。これはいったいどういうことなのでしょうか?
そもそも「8ナンバー」とは何でしょうか。法律上は「特殊用途自動車」と分類され、ナンバーの右上に記載されている3ケタの分類番号が8から始まるためにこう呼ばれています。キャンピングカー以外では警察や消防の緊急車両や街宣に使われる広報車、給水車や霊柩車などもこの分類です。乗用・貨物用ではない、「その他」のような区分です。
90年代頃までは現在と制度が違い、8ナンバー車は税制上有利になっていました。取得のための構造要件も緩く、少なくない車両が「なんちゃって8ナンバー」として登録し税金逃れを行ったため問題となり、00年代以降は安易に取得できない厳格な構造要件に変更されていました。
それが今回、2022年の法改正により、軽や小型車両をベースとしたキャンピングカーの8ナンバーが若干容易になったと言われています。厳格化された20年前に比べ、キャンピングカーのあり方も多様化し、小型車や軽自動車ベースのものも増えています。こうした小型キャンピングカーは従来の基準では構造要件を満たすことが難しく、車両の実態と登録状況が合致しないケースが発生していました。キャンプ装備を取り外して車検を通すという場合も散見され、これは厳密に言えば違法状態です。今回の法改正は小型キャンピングカーを実態通りに登録するためという目的もあるようです。
具体的には、これまでシンク設置場所で1600mmの室内高が必須だった部分が緩和され、条件を満たせば1200mmでクリアとなるよう改訂されました。また就寝設備の数も「乗車定員×1/3、端数切り上げ(かつ最低2名分)」から「乗車定員×1/3、端数切り捨て(かつ乗車定員2人以下の場合は1人分以上)」に変更されました。シングルユースの軽キャンパーで8ナンバー取得を考えている方には朗報かもしれません。それでは、8ナンバー化するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
前提として、キャンピングカーだからと言って必ずしも8ナンバーを取得する必要はありません。乗用・貨物用の3ナンバーや4ナンバーのままでも、条件はありますが8ナンバーを取得したキャンピングカーとほぼ同等の装備を合法的に設置することが可能です。唯一、「横向き座席」だけは平成29年度の法改正で8ナンバー車以外に設置できなくなりました。
キャンピングカーが8ナンバーを取得するメリットとして、よく言われるものが維持費や自動車税を安く抑えられるという点ですが、具体的にどの程度の差額になるのでしょうか。確認してみましょう。
ご承知のように、自動車の保有にはたくさんの税金がかかります。ここでは毎年支払う自動車税、車検時に支払う自動車重量税と自賠責保険料について8ナンバーとそれ以外の比較をしてみます。
乗用車の自動車税額は基本的にエンジンの排気量によって決められます。グリーン化税制による初度登録から13年を経過した車両への加算も毎年話題になりますが、ここでは基本の金額について見てみましょう。全てを記載すると煩雑になってしまうため、キャンピングカーのベースとして代表的な車種について記載します。なお、自動車税額は初度登録が2019年10月以前か以降かで金額が変わります。記載の金額は2019年10月以降に初度登録された車両のものです。
①軽自動車(エブリィ)
乗用(5ナンバー) 10,800円
貨物(4ナンバー) 5,000円
特殊用途(キャンピング・8ナンバー) 5,000円
②小型車(ハイエースバン標準ボディ・乗用5ナンバー・貨物4ナンバー)
乗用 36,000円(2リットルモデル・要構造変更)
貨物 16,000円(3人乗りモデルは11,500円)
特殊用途(キャンピング) 28,800円
③普通車(ハイエースワゴン・乗用3ナンバー/バンワイドボディ・貨物1ナンバー)
乗用 50,000円(ワゴンの場合、バンは要構造変更)
貨物 16,000円(3人乗りモデルは11,500円)
特殊用途(キャンピング) 40,000円
④バスコン(コースター・乗合2ナンバー・乗用3ナンバー)
乗用 75,500円(要構造変更)
乗合 33,000円(要中型免許)
貨物 ---
特殊用途(キャンピング) 60,400円
⑤キャブコン(ダイナ/カムロード・貨物4ナンバー)
乗用 ---
貨物 11,500円(ダイナ・1t)
特殊用途(キャンピング) 40,000円
このように、自動車税は8ナンバー(特殊用途)化した場合でも必ずしも安くなるとは限りません。むしろ基本的に貨物・乗合といった業務仕様に用いるものが安く設定されているため、8ナンバー登録は貨物登録に比べ割高な印象になります。バスコンやキャブコンの場合、8ナンバー以外でキャンピングカーを作るのは事実上難しいかと思いますが、軽キャンパーやバンコンの場合は様々な選択肢があり得ます。
続いて自動車重量税を見てみましょう。自動車重量税は車検時に次回車検までの金額をまとめて支払うのが一般的です。車検期間が乗用車の場合は初回3年・2回目以降は2年ごと、特殊用途(キャンピングカー)の場合は初回から2年ごと、貨物の場合は初回2年・2回目からは1年ごと(軽は2年ごと)と異なるため、実際の支払額はそれに応じたものになります。今回は比較のために2年分で計算しています。現在、自動車重量税はエコカー減税制度や消費税増税に伴う税額変更など制度変更が続き複雑な状況ですが、ここではそれらの減免を除外した標準額について見ていきます。
①軽自動車(エブリイ)
乗用 6,600円
貨物 6,600円
特殊用途(キャンピング) 6,600円
②小型車(ハイエースバン標準ボディ・車両重量1.7t・車両総重量2.8t)
乗用 32,800円
貨物 24,600円
特殊用途(キャンピング) 24,600円
③普通車(ハイエースワゴン/バンワイドボディ・車両重量2t・車両総重量3.1t)
乗用 32,800円
貨物 32,800円
特殊用途(キャンピング) 24,600円
④バスコン(コースター・車両重量3.6t・車両総重量5t)
乗用 57,400円
乗合 24,600円
貨物 ---
特殊用途(キャンピング) 49,200円
⑤キャブコン(ダイナ/カムロード・車両重量1.9t・車両総重量3.5t)
乗用 ---
貨物 32,800円
特殊用途(キャンピング) 32,800円
重量税は乗用の場合は「車両重量」、貨物や特殊用途など乗用以外の場合は「車両総重量」によってランク分けされています。乗用登録に比べ貨物・8ナンバーは安い金額になっています。実際にはグレード・仕様によって車両重量等が変化しますので、あくまで目安としてご覧ください。
最後に自賠責保険料を比べてみましょう。自賠責保険料も重量税と同様に車検時の支払いが一般的です。こちらも比較のために24ヶ月分で計算します。
①軽自動車(エブリィ)
乗用 17,540円
貨物 17,540円
特殊用途(キャンピング) 11,290円
②小型車(ハイエースバン標準ボディ)
乗用 17,650円
貨物 20,340円
特殊用途(キャンピング) 19,980円
③普通車(ハイエースワゴン/バンワイドボディ)
乗用 17,650円
貨物 28,370円
特殊用途(キャンピング) 19,980円
④バスコン(コースター)
乗用 17,650円
乗合 23,060円
貨物 ---
特殊用途(キャンピング) 19,980円
⑤キャブコン(ダイナ/カムロード)
乗用 ---
貨物 20,340円
特殊用途(キャンピング) 19,980円
上記の通り、今度は特殊用途車(8ナンバー)や普通貨物自動車が割高になっています。特に貨物車は比較的高めで、乗用車より10,000円ほど高くなります。
これまで見てきた自動車税・自動車重量税・自賠責保険料を合算し1年ごとの金額で比較してみましょう。
①軽自動車(エブリィ)
乗用 22,870円
貨物 17,070円
特殊用途(キャンピング) 13,945円
②小型車(ハイエースバン標準ボディ2リットル)
乗用 61,225円
貨物 38,470円
特殊用途(キャンピング) 51,270円
③普通車(ハイエースワゴン/バンワイドボディ)
乗用 75,255円
貨物 46,585円
特殊用途(キャンピング) 62,290円
④バスコン(コースター)
乗用 113,025円
乗合 56,830円
貨物 ---
特殊用途(キャンピング) 94990円
⑤キャブコン(ダイナ/カムロード)
乗用 ---
貨物 38,070円
特殊用途(キャンピング) 66,390円
全体的に、「乗用車よりは割安だが貨物車ほど安くない」という傾向があるかと思います。特にバンコンの場合、維持費削減を目的に8ナンバー化してもそれ程の効果は見込めないようです。
ここまで税金・自賠責保険料の比較を行ってきましたが、自動車の維持費には他にも大きな割合を占めるものがあります。それは車検・点検・修理費用と任意保険料です。
車検費用については、乗用・8ナンバーで大きな差にはなりにくいでしょう。どちらも初回以外は2年車検です。貨物用車両は1年車検となるため、4ナンバーや1ナンバー登録車はこの点では不利になります。8ナンバー登録で気を付けたいのが修理などの整備費用です。特殊用途車両の場合、乗用車とは異なる扱いが必要となる箇所も出てきます。1台ごとに架装内容も違うため、点検や修理は乗用車と同じように進めることができません。そのため、8ナンバー車の整備費用は「特別料金」となるケースも出てくるでしょう。もちろん、架装内容が同じであればナンバー登録にかかわらず同じ慎重さが求められるはずであり、そういった意味では「特殊」であることが分かりやすい8ナンバー車の方が確実な対応を期待できる、と言えるかもしれません。
また、特殊用途車両は任意保険の引き受けが難しくなる場合があります。「保険加入を断られる可能性がある」ということです。通常、保険会社は車種やグレードごとにリスク区分を設定し、保険料を計算しますが、8ナンバー車はそれらの区分に該当しません。1台1台、個別対応で保険の引き受けを行います。そのため、加入できるかどうかは保険会社の対応次第となります。加入できた場合でも、一般車より高いリスク区分で計算されることになると思われ、保険料は比較的高額になると予想されます。
さらに、一部ダイレクト系損保では特殊用途車両の保険引き受けをそもそも行っていないケースもあるようです。8ナンバー取得の前に、現在加入している損保会社に問い合わせ、キャンピングカーの保険加入が可能かどうか確認しておくことをお勧めします。「8ナンバー車は等級引継ぎができない」という話も聞かれますが、キャンピングカーは8ナンバー車のなかでも例外的に「自家用8車種」という等級引継ぎ可能な分類に含まれるため、そこは問題なく行えるはずです。
ここまで、キャンピングカーは8ナンバーを取得した方がお得なのか?という点について様々な面から見てきましたが、いかがでしょうか。バスコン、キャブコンといった大型車両は8ナンバーを取得することが前提になるかと思います。一方で税金面の差額が小さいバンコン・軽キャンパーについては、元のナンバーを維持したまま合法的な改装に留めるという手段もアリかもしれません。自分の目指すスタイルを踏まえ、8ナンバー取得が必要かどうかをキャンピングカー専門店などで相談しながら判断することをお勧めします。
当メディアでは、20年以上にわたりキャンピングカーの買取サービスも行っております。 確かな知識でオーナー様に寄り添った査定をぜひご体験ください。